カテゴリ:雑記( 117 )

太郎の母ちゃんへ…

『今日のコラム'18 vol.15』

「K田さんと言う方から、ご予約がありました。都内からなので19:00過ぎる、と…」
到着早々、店主から告げられた。

市原市から出た久々の千葉市、演奏場所の京成みどり台駅近く。到着した演奏スタート一時間前。お店には、まだ誰もいない。

台風の過ぎた八月、まだ明るい夕方の風は、日中の暑さを忘れさせてくれる。

「えっ?太郎が?」

間違いなく太郎、と言うのも珍しい苗字。大学時代の一学年下、20年前一緒にスウェーデンに行った哲学科ピアノ弾きの親友。会えるとしたら、三年ぶりだ。

ホッとしたのが正直な話、お客さんが来るかどうかは、演奏を始めてみないと分からないから。もちろん、嬉しい。

だが、おかしい。アイツが住んでいるのはフランスのボルドー。フランスの自然派ワインを出す店、と言っても話が出来すぎだ。

帰国した記憶をたどると、奇遇なことに私が吐血して救急車で運ばれた四ヶ月前…アイツが高い飛行機代を頻繁に払うとも思えない。

ギターを取り出し、サウンドチェックを終えて、お客さんがぱらぱらと。ふと、店の外に出た。

薄暗くなった駅近くの静かな住宅街、京成電車を降りて帰路に着く人影も疎ら。見覚えのあるシルエットが遠くで動く…間違いなく太郎だ。

「おぉい、太郎‼」

抑えながら大きめに声を出す。影がゆっくりと右腕を上げて、横に振りながら近付いてくる。

間近でまじまじと眺める。ここ数年のこと、25年前のこと、特に死にかけた四ヶ月前のことが織り重なり、幻を見ている気分になった。

二言三言、交わして合点が入った。

「やっぱりな…」

お母さまが亡くなったそうだ。

二十代の頃、お世話になった記憶。ふわふわと宙に浮かんで…すっと消えた。

『嬉しいこと、哀しいことは背中合わせ』40も過ぎて、何度も死にかけてみると、たまに思う。こう書くとネガティブも過ぎるが、嬉しいことだけの人生、と言うのもないだろう。
しかしポジティブに考えて、だからこそ嬉しい時間は貴重だ。確かにベストな生き方は、「現状維持」なのかもしれない。

太郎以外にお越しのお客さん、有り難いことに尊敬する先輩方、聴いてもらいたかった方々ばかり。

太郎の母ちゃんが引き合わせてくれた、そう信じて黙々とギターを弾いた。

遠方より友来る…彼岸からのmessenger。
やはり、お盆です。
今日のコラムでした。

合掌

[PR]
by kenya-guitar | 2018-08-11 15:23 | 雑記 | Comments(2)

続・休養中の生活

d0239615_10452101.jpg

 退院後、二か月が過ぎました。相変わらず千葉県市原市の外れ、低い山と水田に囲まれた場所で暮らしています。

 この辺りの特産品、大根もシーズンが過ぎた今の時期、畑を見るとジャガイモやスイカなど。夏至の日には大豆の種まきをするそうです。写真は毎朝の散歩道、自然と朝早く目覚めて、植物や野鳥を眺めながら歩いています。
d0239615_10504224.jpg
 上空、ホバリングして鳴いていたヒバリがゆっくりと落下するようにジャガイモ畑に舞い降りたり…。
 遠くで鳴いている、と思っていたキジにばったり、出くわしたり…。
 水田ではゴイサギが悠々と…オタマジャクシを踊り食いしているのでしょうか。

 以前、住んでいたのは東京湾沿岸部、千葉市に比べて内陸だからか、空気が程よく乾いていて過ごしやすいです。
 ところで先日、出荷できない大根をたくさん頂戴しました。食べきれないため、考えた挙句、切り干し大根に。フライドポテトのように切った生の大根を万能干しカゴに入れて天日干しすること六日間。ご覧の通り…。

d0239615_10555135.jpg
d0239615_11022685.jpg
d0239615_11025200.jpg
 そして、やはり頂戴した青梅も塩漬けに…七月下旬には庭に生えている赤シソを摘んで、一緒に漬け込みます。

 教わったのですが、植物が含む「土の酵素」が身体に良いのだそうです。庭に生えているタイム、ローズマリー、ミント、レモンバーム、柿の葉、枇杷の葉などなど…植物を瓶に詰めて発酵させた液体を料理に使ったりしています。
 動物、野鳥、昆虫、樹木、植物、微生物、細菌…長年かけて出来上がった自然の生態系の上に、自分がちょこんと乗せられているような気分です。

d0239615_11115937.jpg
 お陰さまで心身共にかなり復調していて、本業のjazzギター演奏も新しくオリジナル曲を作ったり、と充実しています。静かな昼下がり、クラシックギターのエチュード(練習曲)を弾くと、鳴いている野鳥たちと一緒に音楽を作っている気分になって気持ち良いです。

 演奏活動は来月の七月中頃、小学生から過ごした習志野市の京成大久保駅前にあるビストロ Confitから…順次ゆっくり始めていきますので、しばらくお待ちください。
 近々、こちらのblogにスケジュールを上げますので、お楽しみに!!



[PR]
by kenya-guitar | 2018-06-14 11:26 | 雑記 | Comments(0)

休養中の生活


 退院後、市原市の内陸部に移り住んで一か月が経ちました。
 こっちに来てすぐ、家の前の水田では田植えが…ゆっくりと伸びた苗も風にたなびいて、水面にキラキラ反射した日光に映えて様子がきれいです。野鳥のさえずりを聞きながら、ギターの練習をしています。

 さて水田に囲まれたこの場所、移動手段はほとんどが徒歩で、最寄りの駅まで一時間半、スーパーまで40分、コンビニまで20分、ジュースの自動販売機まで5分。「近くて遠きは田舎の道、遠くて近きは男女の仲」と、寅さんが言った通り。のんびりした生活ペースに慣れると、すごく気持ち良く感じます。

 ところで、歩いていると植物が四季の変化を教えてくれます。ここのところ、私のお気に入りは下の写真…
d0239615_10524263.jpg
 明るい日中に舗装された道を歩くと、黒褐色に染まったアスファルトが…mulberry、桑の実がいたるところに。

 ところで岩手にある父の実家、納屋の狭い階段を昇ると、蚕を飼っていて、その臭いを鮮明に覚えています。幼い頃の記憶です。おそらくですが、千葉県市原市のこの辺りも、40年くらい前は養蚕に必要な桑の葉を取るために、桑の木をそこら中に植えたのかな、と思いました。

 写真の通り小さな桑の実、一粒ずつ取るのは時間が掛かります。摘み取る手もベタベタに赤紫色に染まって、二時間くらいで約1kg。とりあえず、水で洗ってから氷砂糖とホワイトリカーに漬けこみました。

d0239615_11104234.jpg
 果実酒です。

 知り合いから聞いた話、桑は実も葉も栄養価が高くて、特に血圧と血糖値の安定に良いそうです。だからと言って、美味しい果実酒は飲み過ぎ注意…mulberry tea、桑の葉茶でお茶を濁したいところです。

 そして暇さえあれば、ギターの練習そっちのけで夢中になっている桑の実摘み。果実酒を作る空き瓶もなくなったところで始めたのが…mulberry jam、桑の実のジャム作りです。

d0239615_11180651.jpg
 フードプロセッサーにかけた桑の実、それと同量の水、半分ちょっとの砂糖を鍋に。火にかけて、弱火でじっくりと煮詰めました。

 退院後に遊びに来てくれた友人のギタリスト、母国のウズベキスタンにもやはりあるそうで、子どもの頃に摘まんではよく食べたそうです。桑の木も、大昔のシルクロード(絹の道)を辿っていたのでしょうか。

 このジャム、初めて作って食べましたがすごく美味しくて、周りのみんなにも大好評。小さい頃にブルーベリージャムを初めて食べた感動を思い出しました。

 今、並べた写真を眺めていて全体的に赤紫色ばかりになってしまいましたね。五月下旬の日曜日、やや冷たい風が吹いていますが、色んな濃度の新緑が陽光に照らされて美しいです。皆さんも良い一週間を…それでは!!

[PR]
by kenya-guitar | 2018-05-20 11:44 | 雑記 | Comments(4)

自然に産まれたメロディ (2)




 これは幻聴ではない。決まった音階でメロディが奏でられている。久しぶりに身体にスゥッと溶け込んでくるこのメロディの正体はなんだろう。
 分厚いコンクリートで固められたトンネルに響く反響音。音源を眺めた先にあったのは、雨水が集められる桝であった。そこからアスファルトを抜けて、腕の太さほどの塩化ビニールのパイプが。今いる歩道から一段下がった車道へ伸びていた。1.5メートルほどか。その中を水滴がひとつ、ふたつ、ピチョン、ピチョン…滴り落ちる音。間違いなく、それぞれが違った音程を発していた。それが硬いコンクリートに反響して、全身に降りかかるようだった。ペンタトニック・スケールで奏でられていた。

 大地から海へと流れた水が、陽の光を浴びて大空へと舞い上がり、風にゆらゆらと流されて雨となって再び大地へ舞い戻る。その水の一粒一粒がこうやって勝手にメロディを奏でながら、再び海に流され…そんな循環の中で私は生かされているのだ、一瞬にしてそんな広がりが身体を巡った。

「わかってくれるかい?」

すぐそばのお社、杜から降ってくる大勢のセミの鳴き声からそんな声を感じた。

 暑い夏の数日間しか生きられないセミたちのオーケストラ、雨粒たちが奏でるメロディを、線路下、深夜のトンネルの歩道、欄干にもたれかかりながらシャワーのように浴びてしばらく時間を忘れた。

 水琴窟、と言うのか。きっと誰も気付かないままに、コンクリートに囲まれた空間の中に生まれていた。この人為的なライブハウスで、夜中に誇り高くも儚い、甘美な旋律を孤独に奏で続けていたのである。



((おわり))
[PR]
by kenya-guitar | 2016-09-27 14:44 | 雑記 | Comments(0)

自然に産まれたメロディ (1)



 何日か前に感動したこと、なんとなく人さまに伝えたくなった。

 ここ一年以上、ペンギン村にいる家族と離れて独りで暮らしている。テレビも冷蔵庫も、電子レンジもパソコンも洗濯機もない。ギターしかない部屋。駅から近くの安アパート。隣はお墓、と言うよりお寺。ギター講師の仕事をしながら、毎日いろいろな方に接して、それだけで充実している。ちなみに音響機器もない。


 仕事も終わり、千葉の繁華街にあるロックBAR、静かな平日の夜にギターを弾いていた。音階、ここ最近お気に入りの組み合わせを即興で弾いていた。自然と、どこかの国の音楽のようになる。ロックではないけれど、ウィスキーのソーダ割を飲みながら。
 カウンターの中で黙って聴いてくれているママさん、じきに店に入ってきた女の人たち。自然に会話が生まれる中、ずっと弾いていた。それでも長く居るうちに、なんとなく居たたまれなくなりギターを持って店を出た。終電で。今住む私の町へ。

 雨上がりの夜中、駅を降りると誰もいない街。ギターを駅近くの私のスタジオにそっと置いて、てくてくと。辿り着いたコンビニの前で開けたハイボール缶。繁華街の雑踏を抜けて、静寂と暗闇に自分を浸していた。濡れた舗道をギラギラ照らす街路灯は、月明かりの真下にあって。近くの神社の杜だろう、こんな夜中に蝉たちがわなないている。それはそれで良いサウンドなのかもしれない。

 ふと、高くキレイに響くメロディが聴こえてきた。なんだろう、酔狂な、迷惑だろう。こんな夜中なのに。コンビニの目の前の住宅街で誰かが楽器を練習しているんだろうか。

 思わず歩き始めた。コンビニ前の信号をハイボール缶片手に。まるで二十代の頃に聴いたトリニダードドバゴのスティールパンのような音色、それが奏でる美しいメロディが徐々にボリュームを上げながら耳にふくらんでくる。

 不思議なことに、総武線下をトンネルのように抜ける道路、その歩道に入ってから、そのメロディは一層音量を上げていく。エコーもより深く。車は一台も通っていない。道を照らす蛍光灯に重苦しさは全くなく、住宅街を外れていく。すぐそこの大きな神社の傍を抜けるトンネルは大雨の時には冠水して、今いる一段上がった歩道、酔いの回った頭でも幻聴じゃあないよな、自分を確かめながらただ歩いていた。



((つづく))
 
[PR]
by kenya-guitar | 2016-08-21 01:27 | 雑記 | Comments(0)

悲しい夫婦



「生まれはどちらなんですか?」

 一年以上ぶりに髪を切るため飛び込んだ初めての美容室。鏡の前に座る私は声をかけられて目を開いた。鏡の中には三十分前と違う髪型の私がいる。いやぁ、世田谷なんですが、父母はもともと東北の出身で、しかも千葉のほうが長いし…見馴れない髪型、ずっと静かにしていたため発した言葉もどこかたどたどしい。美容師の方は修正するように髪の毛を切ってくれている。

「世田谷は私も長い間住みましたけれど、良い場所ですよねえ」

なんてことは無い会話が膨らみ、この歳になると自然に囲まれた場所に住みたい、という私の結論に達した。最近お気に入りの場所は、小高い丘に畑が広がる古い集落。ハクビシンや野ウサギもいるし、野鳥もたくさん。静寂に包まれているようで、賑やかだ。一生そこに暮らしたいとも思う。

「野鳥、って言えばハクチョウがいるの知っていますか?」

ペンギン村から花見川沿い、上流に向かって五kmほどの町、まだ新しい橋が架かっている。瑞穂橋。そこにつがいのコブハクチョウが仲良く住んでいるのは知っていた。昨年の夏から、雪降る冬まで、通るたびに場違いなその夫婦を気にして眺めていた。

「最近、一羽消えたらしくて、ハスノハナ区役所に電話で問い合わせた方がいたんです。どうしたんだと思います?」

ずいぶん暇な人間がいたものだ、でもオレも暇な類の人種だよな、とか内心考えながら、ハクチョウに聞いてくれって言われたんじゃあないですか、と返す。美容師の方は鏡越しに髪の毛を梳かしてくれている。

「それが…」

つがいの片方、一羽のコブハクチョウが近くを走る高速道路の車道に飛来して不時着。大渋滞が起こったらしい。そうなると管轄は道路公団なのか、が捕獲して、どこか遠い場所に放してしまった、と。待ちわびる妻と帰れぬ夫、もしくは待ちわびる夫と帰れぬ妻、のコブハクチョウ。いずれにしても、そのシチュエーションは悲しすぎる。自宅は花見川瑞穂橋の橋の下、の芦原だ。そうでしたか…私は他に何も返す言葉が出せなかった。

 今現在、瑞穂橋にいるコブハクチョウは一羽だけ、だそうだ。だとしたら、その夫婦に私は何をしてあげられるのだろう。明日から、橋の欄干に幸せの黄色いハンカチを一枚ずつ結び付けようか、とも思う。いつか“健さん”ハクチョウが無事に戻ってくる日を祈って。
[PR]
by kenya-guitar | 2016-04-13 22:11 | 雑記 | Comments(0)

新しいシーズン



 四月初旬の週末、ペンギン村駅近くの芝生公園は花見客で賑わっている。まだ明るい夕方、穏やかな晴れの日中よりもやや肌寒い。1kmくらい先の浜辺から流れてくる風が桜の木を撫でては花弁を一枚、また一枚と落として芝の上に散っている。花弁が舞う向こう側ではゴザを敷いた上に若い父母が歓談していて、その向こうにいる子どもたちは皆、楽しそうにボールを転がして遊んでいた。時折、甲高い笑い声がキャッキャと耳に飛び込んできた。ギター講師の仕事も終えた私はそこからやや離れたベンチにひとりで座る。近所のスーパーで買った缶ビールを開けると乾いた音が。少し飲んでから、梶井基次郎の『桜の樹の下には』をふと思い出した。得体の知れない憂鬱、だったか。
 さっきとは別の男の子たち三人がフリスビーを目の前で始める。風に揺られて浮遊する円盤をしばらく眺めていた。一羽のカラスも芝の上に着地する時に黒い翼に風をたっぷりとつかんでいた。

 明るい内のビールは美味いが、酔いの回りも速い。何も考えることなく、ただその公園の風景にしばらく身を委ねていた。この中に溶け込んでいる気はするものの、決して透明人間になっている訳ではないのだろう、と。久しぶりのフロート感で、目の前にある大画面で流れる平和な映像をぼんやり観ている、そんな時間だった。現実味は無いけれども、平和なのは確かな様子だ。

 タバコを一本、煙を眼で追うと、空を這っている雲が視界に入った。キャンバスの上に荒く硬い刷毛で擦ったような雲、上空でも高い層のそれを背景に、低い層では塊になったいくつかの雲が海風に煽られている。うすいねずみ色がゆっくりと流れている。ゆっくりゆっくり、形を変えながら。
[PR]
by kenya-guitar | 2016-04-12 15:50 | 雑記 | Comments(0)

小雨降る2月の日に


「実は主人が去年、亡くなったんですよ…」

60代半ばだろうか、女性は食堂のテーブルを布巾で拭きながら呟くなり、力なくうつむいた。いつから働いていらっしゃるんですか、と私が訊ねたすぐ後の答え。今日みたいな冷たい雨が降る日、精神疾患の方々を就労支援するNPO法人での会話。私はそこで気分障害を抱える方々に、やる気を促せるようギターを教えている。

 先ほどの女性、テーブルの上の手の動きがやや緩慢になると共に、眼鏡がくもった。こういう施設での仕事は、ボランティアに近い上、身体的・気持ち的な疲労も大きい。それでも、ご主人が亡くなってからも女性は気丈に続けたのだろう。
「君みたいな人間でも戴ける仕事なんだから、有り難いんだよ、頑張りなよ…って、主人が言ってくれたから」
最早、私も彼女を直視できなかった。うつむきながら、ただうなずいた。

「被害者は加害者で、加害者は被害者で」
昨日話をしたあるカウンセラーの言葉。ある悩みも、実は前の世代から受け継いだものの反発が起因していて、それを周囲にしてしまう。そして、それを知った自分を責めてまた悩み。だったと思う。
 そういう意味では、さきほどの女性は辛い状況ながらも人様を支えることによって、自らを癒して。ただそれを実直に続けて、一言で健気(けなげ)さを感じた。それを一人一人がバトンタッチしていくことでしか、世の中は変わらないんだ、と思う。

 我が家の近所、葉っぱを全て落とした銀杏の古木、寒々しいのだが今日の午前中に10分くらい立ち止まって眺めていたのを思い出した。

 さて…私も今日やれることをやろうか。
[PR]
by kenya-guitar | 2016-02-22 17:13 | 雑記 | Comments(0)

久々に観たテレビ

 数週間前の話、かなり久々にテレビを観た。Macの長尺のCM、否、映像作品を食い入るように見つめた。ただ引き込まれた。

 こうだ。

 アフリカ系アメリカ人の若い娘、今は亡き父親が生前、自宅に送った手紙とSP盤を偶然、部屋から見つけ出して眺め、当時の父親に思いを馳せる。インターネット通話も、携帯すらない時代、自分の母親へ送った手紙と肉声、同封されたのは軍服をまとった若き日の父親の笑顔、モノクロ写真。年老いた母親の絶望と孤独に満ちた表情がクローズアップされる。それでも家族を想い、心配しないでくれ、と歌った声がただ流れた。no more tears,no more fears…私だったらそう歌うだろう。

 娘はその母親の背中をそっと見つめて、ギターを一心不乱に弾き始める。今まで弾いた事のないギター、を使って。歌いながら表現し始めた。自分の部屋で、どこかの階段で、路上で歩きながら…母親を哀しみを想いつつ悩みながら。

 そして、それをタブレット端末にある録音機能で重ね合わせ、一枚のCDにした。今は亡き自分の父親が当時の母親を想いながら歌った声と、初めて弾いたギターの音と声、美しいハーモニーを作って重ね合わせた。音楽の中に溶け合う想いは、時間軸を超えて、母親へのサプライズのプレゼント。

 それを聴いた母親はただ泣いた。

 極度に発達したテクノロジーは、人々のそういうイマジネーション、思いやりを支えるためにあって欲しい。ただシンプルに。それを映像化しただけだ。きっと時間も言語も、国境も、イデオロギーだって飛び越えられる。

 観た後に私も泣いた。自宅の天井を見つめて。

 その父親は、出征して亡くなったのか…否、違う。誰を傷つけることなく、祖国にただ帰国したはずだ。その願いは、自宅の天井を突き抜けて欲しい。その願いだけが残った夜だった。

 今日の夕方、仕事から帰宅した妻と二人、自転車に乗ってきれいな薄赤紫の夕焼けを眺めた。買い物に行って、眼を細めたような三日月から滴るような、赤い星もオリオン座も。「こんなもの、本当は無料だよ」とか、言いながら。毎日、無料で全世界配信されているのだ。美味い夕食を家族のために作って、昭和ひと桁生まれの義父と、二十一世紀生まれの子供たちとみんなで食卓を囲み。美味い酒飲んで、皿洗いしてから、千葉界隈の酒場でギターも弾けた。私も精神疾患で隔離病棟に入った時期もあった…でも、既に有難いのだ。いろいろな方にお会いできた。

 ただそれだけです。明日も穏やかな気持ちで…。
[PR]
by kenya-guitar | 2015-03-26 04:05 | 雑記 | Comments(0)

black eyes blue

Oh, I never should've trusted you. [Repeat x4]

https://www.youtube.com/watch?v=HNOR36mPtbk
[PR]
by kenya-guitar | 2015-02-26 09:14 | 雑記 | Comments(0)


ギタリスト鈴木健也の雑記帳


by kenya-guitar

プロフィールを見る
画像一覧

カテゴリ

プロフィール
スケジュール
KENYA MUSIC
ギター
演奏日記
雑記
小説

最新の記事

太郎の母ちゃんへ…
at 2018-08-11 15:23
2018年8月からのスケジュール
at 2018-08-08 13:49
演奏活動再開のお知らせ…20..
at 2018-06-20 13:41
続・休養中の生活
at 2018-06-14 11:26
休養中の生活
at 2018-05-20 11:44

画像一覧

以前の記事

2018年 08月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 05月
2017年 04月
2016年 12月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 04月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 10月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2013年 06月
2013年 05月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月

外部リンク

フォロー中のブログ

田口ランディ Offic...
森のことば、ことばの森
dezire_photo...
世に倦む日日
ペンギン村 村営ハナモゲ美術館

最新のコメント

引っ越し屋さん 京..
by kenya-guitar at 10:54
みどり台でのライブお疲れ..
by msakai3939 at 10:42
引っ越し屋さん デ..
by kenya-guitar at 15:20
アンガの前売りと当日の料..
by 引っ越し屋 at 09:23
hiro-さん そうで..
by kenya-guitar at 10:08
引っ越し屋さん そ..
by kenya-guitar at 10:04
引っ越し屋さん コ..
by kenya-guitar at 10:01
デューク東郷さん コメ..
by kenya-guitar at 20:27
引っ越し屋さん、返信遅く..
by kenya-guitar at 15:16
引っ越し屋さん、コメント..
by kenya-guitar at 13:08

最新のトラックバック

梅雨にも似合う気品ある紫..
from dezire_photo &..
オスマントルコ帝国の栄光
from dezire_photo &..
ローマ帝国・ビザンチン帝..
from dezire_photo &..

メモ帳

ライフログ

検索

タグ

その他のジャンル

ブログパーツ

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

音楽
創作小説・詩