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ママの憂うつ アンコール(5)

〈共感(名・自)〉同じ気持ちを感じること。

盛大な拍手の中、挨拶を終え、ステージから袖にある倉庫に戻る。

その途中、見えた景色。アタシなんで泣いてるのか分からない、ハンドタオル片手に笑いながら泣いている方がいた。アイシャドウが微かにぼやけている。ママ友、だろうか隣のお母さんがそのお母さんの肩に優しく手を添えている。頬を伝う涙も自然に乾いて、取り戻した本来の感情。きっとお母さん達も自信を取り戻してくれたと思う。これで良かったのかな…がっちりとした手応えを掴んだ、とも私は思っていなかった。
ただ、自分達の作った曲を演奏した後で広がっている世界の一部を感じた。それは有名になった、とか大金が手に入った、とかSNSやって友達が増えた、とか…目に見える何かを得た、という訳ではなく。聴いてくれている方々の感情に寄り添って差し上げられた、今にして思うのはそういう事だ。聴いてくれた方々と更なるハーモニーを産み出す。音楽して共感を得る原点、だと思う。

「はぁぁ…疲れた。久々に演奏にエネルギー使ったわ…」
「健也君、お疲れ!良かったよね?」

狭い倉庫の中に戻った我々三人。思わず漏れ出た私の言葉に応じるS太。C君も満足そうだ。私は肩で息をする。

「しかしS太…お前、女泣かせだなぁ。お前が歌ったからか、皆さん泣いてたぞ。見たろ?」

冷やかし半分、精一杯S太を労ったつもりだったが。

「えっ!?何が?」
「えっ?見てなかったの?お母さん達、みんな泣きながら聴いてくれてたんだよ?」
「えっ!?マジで?俺、歌い始めると入り込んで周りが見えなくなるんだよね…」


ヴォーカリストは好き勝手に気まぐれで…それで良い、と思う。歌いたくなった時、存分に叫んで欲しい。そこに本当の音楽がある、とも思う。

そしてS太とは再び音信不通になった。


((おわり))
一緒に演奏してくれて、ありがとう。
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by kenya-guitar | 2014-10-31 12:18 | 演奏日記 | Comments(0)

「あたたか~い」清涼感

〈渇き(名)〉のどがかわくこと。

ペンギン村を分けている水路、橋の上から水面をぼんやり眺めている。気持ち良い陽気、平日の日中、欄干に寄り掛かりながら。鯉ほどの大きさの鯔がぬっとして泳ぐ様をただ観ていた。鯔背、って言うが、どうして江戸っ子はこんな魚に思いを馳せたか。そんなに勇ましくも見えないギャップが不思議だ。

「あんな魚、ギャング針ですぐに引っかかりますよ」

釣り好きな友人曰く。それほど、のろまな魚だそうで…鯔墨、カラスミは珍味ではあるが、東京湾の鯔から採れた卵巣は臭くて使い物にならない、と。以前、新聞で知った。小骨が多いため、泥を吸う。水質がものを言うらしい。カラスミ、ボッタルガ、って言うのもすかすかした間抜けなサウンドだ。美味いけど…。

水路はそのまま海へ、東京湾が一望出来るペンギン村の浜辺から世界と繋がっている。三年前の大震災直後、この水路がものすごい勢いで逆流して、しばらくしてものすごい勢いで海へ流れているのを子供たちと眺めた記憶がある。この街で液状化現象が起こっていた最中の出来事。
「コップの水を川に流したところで、再び同じ水をコップに戻す事ができますか?」神道の考え方だそうだ。とにかく川は流れて海へ落ち、世界と繋がっている。ガンジス河は給水も排水も水葬だっていっしょくた、で…この街に住んでいると、その概念がセパレートされて水が我々を潤し、健康で衛生的、かつ文化的な生活を享受している現実すら忘れる。

有り難み…当たり前な事が当たり前に頂ける貴重さ。蛇口ひねりゃ、水が流れる。



ところで話は変わるが先日、ペンギン村の外れにある静かなショッピングセンターで十人くらいの方にギターを教えていた。休憩中、自動販売機に¥110-を入れて「あたたか~い」お茶のボタンを押した。

ガダンッ…!!

大仰なデカい音を立てながら、出てきたのはデカビタC。炭酸飲料水オロナミンCのデカいヤツ。「んっ!?」ただでさえパラノイアな私は騙されているのか、と自分をまず疑う…自分が幻覚を見ているんじゃないか、日常的に思う。
ギョッとして恐る恐る手に取ってみると…「あたたか~い」デカビタC、だった。

ははぁ~ん、手に取って思わずゲラゲラ笑いながら、合点する。電話した。自動販売機管理会社のフリーダイアルにガラパゴスから。笑ってしまい苦情も苦情にはならない。ただ単に自動販売機に飲料水を補充する際、間違えて入れたのだった。さすがに飲む気にもならないが。

二十分後、返金にやって来た30才くらいの営業マンはびくびくした表情。律義に¥110-を私に…私は私で「ぬる~い」デカビタCを営業マンに返す。

昔、炭酸飲料水のTVCMで砂漠のど真ん中にある自動販売機の前で猛烈な渇きを覚えた若い女が「つめた~い」炭酸飲料水をごくごく飲み干す、ってのがあった。バブル期、だったと思う。
砂漠の自動販売機で、そんな補充の間違いがあったらどうするのか…三日後くらいに駱駝に乗ってターバンを巻いた営業マンが¥110-を握ってやって来る図を勝手にイメージした。それ以前にガラパゴスもスマホも通じないかもしれない。もしくは脱水症状の内に、無理矢理こじ開けようと血だらけになった自動販売機の前で爪が剥がれた死体として転がっているかな、とか…だったら「あたたか~い」炭酸飲料水を飲むよな、とか。昼夜の寒暖差が激しいはずだし。サハラ砂漠のど真ん中に置き去りにされた話がゴルゴ13にあって、狐みたいな哺乳動物をほぼ手づかみで捕獲してナイフで首を掻き切り生き血をすすってたな、とか。

そんな有り難みの中で、実は生かされているのかな、と思う。「あたたか~い」気持ちの中で…確かに清涼感を感じた。エスプリではない。
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by kenya-guitar | 2014-10-30 22:51 | 雑記 | Comments(0)

ペンギン村の夕陽

〈沈黙(名・自)〉だまりこむこと。

何合目付近、だろうか。末広がりの富士山に寄り添う様にして、半分以上欠けた夕陽がゆっくり沈んでいく。

様々な赤に変色しては、富士の稜線をくっきりと濃いグレーに浮かび上がらせ続けている。その鮮烈な色彩はゆっくりと小さな光源へと収束しているのに気付く。そう気付けば気付く程、今この一瞬がいとおしくなり。一編のフィルムに魅せられた様に、吸い寄せられている自分に再び気付き、拒みながら視界を広げる。

今こうやってペンギン村の浜辺に私は立ち尽くしている。隣には小五の息子が…キャッチボールを終えた後の時間。

空を見上げると頭上は透き通った青だ。でもその周りを白けた空が、そして水平線に沿って薄い紫の帯が伸びているのを見ると、夜の静寂(しじま)が降り立つのが予期出来る。それも褪色しながら。よく見てみると頭上の青も暗さを増している。夜はどこから来るんだろうか。その深い静寂は、今こうやって生きている喧騒の中に点在する沈黙とは真逆のサウンドだ。

隣にいる息子は持っているバットで不思議と素振りを始めた。砂浜の上、不安定な足元でも黙々と。微笑ましい…なんとなく、私は頬が緩んだ。周りを見渡すとカメラを構えた方々がぱらぱらと。皆さんそれぞれ、その夕陽をただ眺めていた。ご年輩の夫婦も目についた。

シャッターを切る瞬間、ってどんなタイミングなんだろうか…ふとつまらない事を考えた。自分の感性に正直な瞬間、なんだと思う。それじゃあ、良い写真を撮るには…自分の感性、磨くしかないよな。自分を知って、自分で考えて。
最近よく読む、あるカメラマンの方のblogを思い出した。書いている文章全体に世界中の長閑な風景が広がって見える。

その人にしか持ち得ないフィルターが大事、なんだと思う。決まりきったシャッターチャンスなんてものは無い…。
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by kenya-guitar | 2014-10-30 14:01 | 雑記 | Comments(0)

落ち葉を踏みしめて

〈夷狄(名)〉中国の周辺地域に存在する異民族。

街路樹のイチョウからぽろぽろこぼれ落ちる銀杏の実、特有の臭いも歩道から消えた秋。9:30頃だったか、珍しく流れる空気に清冽さを感じつつ自転車を走らせていた。ペンギン村から少し離れた古い町にあるスタジオまでギターを教えに行く途中。

ダウン症の子供が二人。高校生くらいか、の男女。素直な笑顔、実直な挨拶を交わし、相手を思いやりながら横断歩道を注意深く渡る。健気に生きる人間らしい人間関係。
「ダウン症の子達は天使だ、ってよく言うよね」お世話になってる女性が話していた。その話、妻も会話の中で呟いた。私自身、初めて知った言葉、だった。

可視化される人間関係、ネット空間で自分が吊るされる恐怖に怯えながら生きる社会。見えるモノの中でしか生きてないから、見えないモノを直視しようとしなくなる。人間の能力は数値化されて、それも極限まで細密化され二元的な価値しか見えなくなる。敵か味方か…そこかしこのヘイトスピーチの応酬に辟易して、誰もNOと言えず、最終的に人間の魂も塵ほどの価値がなくなる不安。全て簡単にワンクリックすれば済む話。人間の魂、なんて見えないから。


「健也ぁ~…手塚治虫『火の鳥』のテーマ、知ってるかあ?ガッハッハッハ(笑)」
大学時代の尊敬する先輩から訊かれた。

そもそも人間、群れては同じ営みを繰り返しては凝り固まって暴発し、再び散らばって。テクノロジーの進化に伴って、再び綿密に凝集するシステムが構築され、の繰り返し。いずれは爆ぜる…悲しいけれど。

自分自身、父親の田舎が岩手の古い農家。千年近く前に征夷大将軍に焼き払われた古い町。
そういう古い町の方々とお話していてよく思うのは、仲間同士お互いの父母、祖父母、その前の代までの事をよく覚えている。お互いのジェノグラム(家系図)が共通認識としてある。それはそれで結束を生むだろうし、息苦しくなる人間もいるだろう。「田舎は残酷ですよ。都会って本当に素晴らしい」そう呟いた友人は青森からペンギン村に移り住んで家族を持っている。

そして、新しい街へ…寄り集まる。さりとてこのペンギン村だって40年経つと様々な問題を抱えている。例えば、高齢者ばかり、孤独死なんて日常だ。平日の日中に歩かないと見えない景色。私が思春期を過ごした街は東京湾沿いの埋め立て新興住宅地だった。ペンギン村の空気と似ている。

「健也、世の中で一番怖いモノはなんだと思う?」
私が三歳くらい、岩手の田舎に一ヶ月預けられた時、祖母に訊かれた。私はオバケとか、ドロボウとか、ヒトゴロシとか…そう答えたと思う。祖母は
「健也、世の中で一番怖いモノはね…人間なんだよ」
人間はお化けにも、泥棒にも人殺しにもなる。私はポカンと口を開けていた。

そんな祖母も既にこの世にいない。この世に仏の世界を、そう願って作られた村。兄弟喧嘩に巻き込まれ、権力から夷狄扱いされ…そして焼き払われた村、千年近く前に。
それでも、この世界の片隅で静かに生きていかなきゃならない。その智慧だけは残されている。
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by kenya-guitar | 2014-10-29 12:45 | 雑記 | Comments(0)

ママの憂うつ アンコール(4)

〈みなぎる(自)〉①水が、あふれたようにいっぱいに広がる。②広がっていっぱいになる。

いつか見たその笑顔 明日も見せてくれますか
いつも見たい笑顔はどう? 今日も元気にしてますか


曲もクライマックスに差し掛かり、感情が弾けたのも束の間、お母さん達の表情に笑顔が漲る。せっかくこうやって生きてるんだから自信持って…ギターを弾いている私も嬉しかった。S太と私が作った曲、ではあるが、演奏している我々三人の手元を離れて新しいハーモニーを生み出している実感があった。解き放たれた、が故に執着なんてものはないこの一瞬。S太が叫ぶ。

「みんな一緒に歌って!」

La la la la... la la la...La La la la la...

繰り返す短いメロディ。歌いながらリズムに合わせて大きく振るS太の左腕、お母さん達も全員一緒に。ステージから見える風景は、きらきら光る波に見えた。この時間がいつまでも続いてくれたら…とも思うが、一瞬だからこそ美しいんだよな、と自戒してS太とC君を見やる。二人と目が合う。減速するリズムとメロディ。S太は最後手前に大きく溜めを作り、最後の「la…」をたっぷり伸ばした。

「どうもありがとうございました!!」

私が最後のコードをギターで掻き鳴らしている間にS太が感謝の気持ちを伝えると、盛大な拍手が。皆さん、一様に笑顔だった。


((つづく))
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by kenya-guitar | 2014-10-24 11:47 | 演奏日記 | Comments(0)

ママの憂うつ アンコール(3)

〈はち切れる(自)〉いっぱいになって破裂する

心の中 乾いた風が かさぶたを優しく撫でる

「俺「かさぶた」って言葉、すごく好きなんだよね。健也君、よくこんな歌詞書けるよ…すごいよ」

S太に褒められるなら本望だ。はっきり言って、私は歌詞なんて書いた事はなかったからこれが初出だ。作ったとして歌のないインストゥルメンタル音楽、殆どジャズギターしかやってこなかった。

「撫でる、って漢字は「愛撫」の「撫」だぞ。手扁に無い、って書いて…まるで手が無いがごとく「撫でる」みたいなね」
「死ね!このクソエロジジイ!」
「ガッハッハッハ(笑)」

S太の休日前日、仕事が終わった夜遅い時間、私の住むペンギン村の人気のない浜辺の東屋。暗い中で練習した。ヤツが歌って、私はギターを。S太はS太で、二年前に父親を亡くして病気の母親を一人で面倒看て生きなきゃならない三十才の切実な現実。『the rusty moon』も一生懸命練習してくれた上、お母さんに聴かせてくれた。すごく良い曲ですごく悲しい曲だね、と。

ステージ上、リラックスして弾ける様になった瞬間にストロークでギターを掻き鳴らしながら頭に浮かんだのはそんな会話を交わした記憶だった。この曲が解き放つのは幼稚園児のお母さん達だけじゃなくて…そんなリアルに生きるS太も、かもしれないな。そう思えると今この瞬間、この場所で演奏して聴いてもらっている、ピントが合うな、と。間髪入れず、S太が熱く歌い上げる。


あまりうまく言えないけど
好きだよママの笑顔 don't forget your best smile
smile...



間奏、C君のトランペット。解放感溢れるメロディはS太が考えてくれた。はち切れた感情、客席のお母さん達。中空を見上げる方、ハンカチか何かで目頭を押さえる方、人前を憚ってか泣き笑いの方。トランペットが奏でるそのメロディにそれぞれの想いを乗せて。


((つづく))
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by kenya-guitar | 2014-10-15 10:10 | 演奏日記 | Comments(0)

ママの憂うつ アンコール(2)

〈アーティキュレーション(名)〉①発音の明瞭度。歯切れ。②音楽の演奏において,各音の切り方,あるいは次の音との続け方のこと。演奏上,フレーズ内部の分節を明確にする表現手段として重要。レガート・テヌート・スタッカートなど。

ステージ向かって右側、上手に陣取るC君はトランペットを手にしている。私に向かって静かに頷いた。そしてステージ中央、短くマイクチェックを終えたS太も私に目で合図を送る。大丈夫だよ、二人に伝わるように微笑んで返し、私は俯いてギターに集中する。
決められたテンポから逸脱しない様に、丁寧にイントロを爪弾く。例えて言うならば自動操縦モード、いつもの調子でギターを弾けるな、と思えた瞬間にふと目を上げる。客席のお母さん達、目を瞑って聴いてくれている方が何人もいた。とにかく皆さんそれぞれ、この曲に対しての想いがある…短いイントロの合間、強く感じていた。ヴォーカルがそっと入ってくる…。


『ママの憂うつ』歌詞


リハーサルの段階で、ギター伴奏のアーティキュレーションについてS太からつぶさに指示を受けていた。もちろん、C君のトランペットについても、だ。S太は表現する事にすごくナイーヴでいて、すごく厳しい。それはヤツの歌声にダイレクトに表出している。私は譜面に細かくメモしたその強弱を、的確に演奏する様に集中した。再びリラックスして演奏出来る(比較的ではあるが)パートは二回目のサビ、ストローク弾きの部分からだ。

いつか見たその笑顔 今日も見せてくれますか
いつも見たい笑顔はどう? 今日も元気にしてますか


ふと客席を見る。座っている幼稚園児のお母さん達、四十人強いる内の半数以上、涙を流しながらも真っ直ぐ我々に目を向けていた。

((つづく))
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by kenya-guitar | 2014-10-14 12:43 | 演奏日記 | Comments(0)

カフェ…サンカーラ…

〈向日葵(名)〉(植)庭に植える大形の草。夏、くきの頂上に大形で黄色い花をつける。たねから油をとる。ひまわりそう。

今週の何曜日だろうか。仕事がようやく終わった晩秋、夕時。いつもの様に項垂れていた近所のコンビニの前で、缶ビールを片手に聞こえてきたメロディ。顔を上げて目を向けた。

「ひまわりのような まっすぐなその優しさを 温もりを全部」
by秦基博『ひまわりの約束』

五人くらいか、自転車に乗った近所の中学生、その中の一人が自然体な声でのびのび歌っている。
声変わりも未熟なその時期に、気付き始めたリアル。それでも忘れちゃいけない想い、が入り混じった即席な音楽にじわり、こみ上げるものがあった。青い植物を思わせる香り。私の人生を振り返ってみても…。


一応は所帯持ちの私も、世捨て人ながらなんとか日々生活してはいる。支えてくださる方も多い。家族以外でも。
その内の一人で千葉の繁華街にあるロックBARのママさん、が営むインド料理屋で出前のアルバイトをさせて頂いたのは昨夜。ご商売を始めて三十年くらいなのか、千葉の旧赤線地帯の裏手で堅実に時間を刻んでいる。

インド料理屋の屋号である「サンカーラ」…昔読んだ岩波新書の仏教の本に出てたけど、意味を忘れた。仕事中に私のガラパゴス(携帯)で調べてみた。ジャイナ教から始まる思想、パーリ語でサンカーラ。サンスクリット語では?
全ての生物は輪廻して転生する、そんな世界観を前提に、前世を含めた因縁に起因する現世の苦しみ、と解釈した。全ての人はサンカーラの中で生きている、みたいな…ある種の諦めと言うか、開き直りと言うか。その世界観が仏教へ繋がり、インドのみならず私が住む国にもこうやって。私の好きな或る作家が「仏教の宗派が、まるで音楽のジャンルの様に派生した」と表現したが、その語源、とも言える。

お得意様の大学附属病院はもちろん、ソープランド街もあり。昨夜はソープランド街裏手にある一応オートロック式アパートまで風俗嬢とおぼしき女性にカレーを届け、附属病院の手術部まで手術終わった後らしき女医にカレーを届け…インド料理屋「サンカーラ」で働いているのに、お客さんのサンカーラを感じ、その循環で生かされている自分のサンカーラを感じた。

この苦役を終えた後、次は何に産まれ変わるのだろう。昔「私は貝になりたい」ってモノクロTVドラマが再放送されていた。たとえ貝に産まれ変わってみても、無邪気な子供に熊手使って潮干狩りで取られてから、そのお母さんにボンゴレビアンコか味噌汁にされて食されて体内を経て、厠で潔く放出された私(貝としての)。また何かに産まれ変わるのか…それとて定かではない。
そんな事を、台風が接近している風景をボォっと眺めながらビールを飲んで考えていたら、文章にして人様に読んで頂きたくなった。もちろん、冒頭の中学生が自転車に乗って口ずさんでいたメロディの記憶、が瞬間芸術としてキラキラ輝いて聴こえた…それをBGMにして読んで頂きたい。

個人的にはこれと似た内容のメールを送った太郎、ハープのSさんに突き動かされて書かずにいられなくなったが。最近、お知り合いになれた色々な方のサンカーラにも…有難う、と伝えたい。
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by kenya-guitar | 2014-10-14 01:44 | 雑記 | Comments(0)

ママの憂うつ アンコール(1)

〈散発(名・自他)〉①(たまなどが)まばらに出ること。②間をおいて、まばらに起こること。

さっきまで三人で立っていたステージ、違っているのはそこから見える景色、であった。私が再び上がるとパラパラと拍手が散発的に湧いた。
我々のアンコールを期待して居残ってくれた幼稚園児のお母さん達、二十代から三十代だろうか、が四十人強。そしてその周りを園長先生をはじめとして、お世話役的な立場の先生方が取り囲む。皆さん、幼児用の低い学習椅子に座っている。私はステージ中央に立って、S太が使っていたマイクを手にした。なるべく短めに、と心がけながら「ママの憂うつ」を作った経緯を話す。

子供を持つ自分の経験…人に愛されたいと思って生きてきて子供が産まれ、今度は自分が全面的に愛さなければならなくなる女性の葛藤。無条件に子供は母親を受け入れてくれてるはず、だったが子供達が新たな人間関係を形成して、また母親同士の複雑な人間関係が生じる。ぎくしゃくして、うまくいかない。でも良いじゃん、彼、彼女(子供)だって笑顔でいたい。お母さんが笑顔で居てくれたら、それを見て子供も笑顔で居られる。それはみんな同じなんだよ…という気持ちで書いた詞。S太も気持ち良く共作してくれた。

「そんな訳で…他のメンバーを呼びましょう。トランペットのChiba-kun、そしてヴォーカルのretmic!かもぉん!」

ステージに二人がそれぞれ上がると、再び拍手が湧いた。


((つづく))
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by kenya-guitar | 2014-10-13 15:24 | 演奏日記 | Comments(0)

ママの憂うつ インタールード

〈セピア(名)〉黒茶色(の絵の具)。

『 the rusty moon 』
作曲・作詞 logical

湿った砂になぞった文字は
波に静かに消えた
セピア色の記憶には no more cry …
赤く錆びた月が見ている

突き刺さるぬるい潮風が
頬伝う涙を癒しても
ゆっくりと沸き上る感情だって
月だって涙を溜めてる

the rusty moon shines on the sea,
like your red eyes in this dark sky.
聴かせたいbluesなんて…もうない

he's leading you to the silver road,
you can come across this dark sea.
ただ真っ直ぐに woh,woh,woh,…伸びてる


にび色にギラついた海が
君を臆病にさせた
分かってた…震える指先
瞳に涙浮かべてた…your red eyes

世界に二人取り残されても
ぬくもりを感じていられたら
青白い色の記憶はもう…
月が照らす路を渡ろう

the rusty moon shines on the sea,
like your red eyes in this dark sky.
聴かせたいbluesなんて…もうない

he's leading you to the silver road,
you can come across this dark sea.
ただ真っ直ぐに woh,woh,woh,…伸びてる
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by kenya-guitar | 2014-10-13 15:17 | 演奏日記 | Comments(0)


ギタリスト鈴木健也の雑記帳


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