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帰郷(8)

〈G(名)〉重力の加速度を表す記号。

「健也君…健也君…」

誰かに強く揺さぶられた身体をひねって動かそうにも、どうにも動かない。でもさっきまで宙に浮いた感覚、飛行機が離陸した時の様な強いGを前後左右に感じていたのを身体が覚えている。

「お父さん…お父さん…お父さん…」

今、私は座った状態で椅子に縛りつけられている。眼を開くと何台もの車が停まっているのが分かった。一瞬、身体がヒクッと痙攣した。そうかここは駐車場か、と認識するのと同時に子供達の笑い声が聞こえてきた。間違いない。娘と息子の声だ。

「お父さん…お父さん…起きて…ねぇ、起きてよ」

さらに揺さぶられた私はしっかり眼を開き、顔を上げる。自分の車の助手席にシートベルトを着け座っているのが分かった。
「大丈夫?ニヤニヤしながら寝言言うの止めてくれる?気持ち悪いから」
運転席には妻が座って呆れた顔、私の方を見て笑っていた。
「まだ福島だけど、ちょっと休憩。お土産屋にも寄りたいし。ここから運転してよ…よく寝れたでしょ」
あぁぁ、分かった、と呟いたと同時に私は欠伸をしながら背中をぐっと伸ばした。そうか、岩手からの帰り道、もう福島まで来たんだ。
二泊三日で一ヶ月以上前から計画した帰郷、墓参りも行き、伯母も見舞い、中尊寺へも行き、祭りも見て従兄弟とも打ち解け、父の実家へも行って…で、あっと言う間に終わった。父が子供の頃に見ていた風景、時代と共にだいぶ変化しただろうが、子供達と一緒に見る事が出来たのは良かった。シートベルトを外してドアを開けるとむっとした空気が、クーラーの効いた車内の空気と混じり合うのが分かった。
「千葉にいるよりは涼しいよね」
呟く妻に頷く。岩手にいた充実感もあって、ぐっと身体中が解れるのを感じる。
「お父さん?さっき寝言で言ってたけどさ…踊るアホ、見るアホ、って何?」
息子の問いかけに戸惑いながらも、あぁそう、と笑ってごまかした。


(終わり)
長い文章にお付き合い頂きありがとうございました。
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by kenya-guitar | 2012-08-18 17:49 | 雑記 | Comments(2)

帰郷(7)

〈恍惚(形動)〉①うっとりとするようす。②老人になって、ぼけるようす。

駅前通り商店街のメインストリートに週刊少年チャンピオンから出て来た様な格好の男女がいきなり勢揃いした。七、八十人くらいのその踊り手達のいる車道の縁石にはびっしりと観客が座っている。私は司会の女性が居る本部テント脇に立ってその様子を見守っている。スピーカーからバスドラムの重低音が響き、威勢の良い掛け声の様な歌が一発響くと緊張感の中で三味線の音も。ピアニシモからフォルテシモに聞こえてきた。マイクの前では男が三味線を掻き鳴らしている。司会の女性が紹介する中で男女混成の組、若い女だけの組、地元一関のよさこいチームだけで無く周辺の市からも集まったチームはそれぞれ゛無限大゛だとか゛武偉猛゛とか、猛々しさが塊になって感じられる漢字の名前の入った大きい旗を物干し竿の様な棒に翻し踊りまくる。女の歌声が混じっている…気付くと司会の女性が真っ赤な忍者みたいな衣装でマイク片手に粘り気のあるビブラートを張り上げていた。

「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損、損」
一ヶ月程前に千葉旧市街地の繁華街で行われたクラブミュージックイベント。メイン会場、深夜遅くトリに出たバンド、ロックとレイブミュージックを融合したサウンドの中でヴォーカリストがその店びっしりに入った百人以上の観客を煽って放った言葉を私はふと思い出していた。

男がいて女がいる。いつもある風景を背後にして何か覚醒させて日常を忘却させる演出、大音響のビート。肉と汗。ビートに合わせて同じ振り付けで踊っている様に見えて、それぞれを表現している様にも見える。感じられる剥き出しの何か。祭りだった。

「激しい踊りだから中に入らないでくださいねぇ!特に小さいお子様!危ないですからぁ」

司会の女性が観客に注意するその言葉もアジテイトにすら思える。二十分くらいだろうか、恍惚としてその光景を眺めていた私の肩を誰かが強く叩いた。
「健也君…健也君…」
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by kenya-guitar | 2012-08-18 14:28 | 雑記 | Comments(0)

帰郷(6)

〈アジテイト(名)〉扇動すること。ある目的のために活動すること。

車輌通行止めになっている駅前通りのちょうど中心部、テントが立ち簡単な音響設備が揃えられている周辺にやって来た。甚兵衛姿の中高生は車道の縁石に座り込み、各々飲み物を片手にじっと座って待っている。ちょうど16:00前だ。何かが始まる軽い緊張感がある。これからメインイベントのよさこいが始まるんだよ、従兄弟の視線を追うまでもなく、さっきから甚兵衛や浴衣ではない派手な衣装を纏った連中がいるのに気付いていた。親子でやっているのだろう、子供もいるが見たところ十代後半から三十代後半。男はリーゼントが、女はひっつめ髪が多く、歌舞伎役者の様な隈取りを白や黒、ラメ入りの極彩色で施している。衣装は昔で言う長ランの様な長袖が多い。黒や赤、真緑色…週刊少年チャンピオンにありそうな漫画に出てくるキャラクターが現実世界に舞い降りた感じだった。
「皆さぁん…盛り上がってますかぁ!!」
声の方向を見ると、マイクの前の司会者の女性もまた同じ様な衣装、茶髪で派手目の化粧だが五十代くらいだろうか。たっぷりと呼吸の間を取って観客をアジテイトする。いつもやっている手馴れた感じはあるが、開始前の緊張感が声を通して伝わってくる。車道の真ん中は大きくスペースが空けられ、観客は道の両側でじっと見守っていた。
「スタートの時間までまだありますが、これから直ぐによさこいを観たい方…拍手をお願いします」
司会の女性の呼び声に応える拍手はパラパラと、疎らだった。この辺のゆったりした奥ゆかしさも県民性だろうと思う。
「これから…よさこいを直ぐに観たい方、もう一度拍手を!」
煽る司会者。さっきより大きく長めの拍手が商店街に響く。
これから祭りが始まるのだ。
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by kenya-guitar | 2012-08-16 20:03 | 雑記 | Comments(0)

帰郷(5)

〈モータリゼイション(名)〉自動車の普及。自動車大衆化。

菩提寺のすぐ近くにある伯母の家に立ち寄った後、軽く昼食を済ませた私達は平泉にある中尊寺へ行った。せっかく来たのだから世界遺産になった中尊寺へ、といったところだ。運動不足の私にとっては辛い坂道、参道を汗かきながら登り、金色堂に参拝した。天災や疫病、戦乱の激しい時代、平和を願って建造された金色堂。阿弥陀如来や地蔵菩薩が並ぶお堂の前でそっと手を合わせた。
じゃあそろそろ、と参道を下りている頃に電話が鳴る。一関の駅前通り旧市街地でやっているいる祭りに行かないか、従兄弟からだった。

今日はそんなに人が多くはないな、夕方の駅前通り商店街には小中学生や高校生などの若者が甚兵衛を来てアイスキャンディ片手に歩いている様な弛い空気感。各商店が店の前でかき氷や焼き鳥などを売っている。我々が行ったのは三日連続で行われた祭りの最終日。初日は花火も打ち上げられて、身動き取れない程人が集まったそうだ。が、その日は一地方都市の長閑な風景、商店会で一年費やし作った飾物以外さして派手さは感じられないなぁ、と思いながら商店街をゆっくり歩いていた。昭和の面影残す町並み、地方にある雰囲気の楽器を一緒に売る小さなレコード屋や小さな本屋。スナックばかり集まった一角、夜中遅くまで営業しているラーメン屋。その一角を囲む様に地方出張で来た客のためのこぎれいな飲み屋とビジネスホテル。街の動線がバイパス沿いの駐車場付き大型店舗の集まる一帯へ移り、駅前の大手スーパーが撤退後残された建物。一時期は一関に三軒の映画館があったそうだ。その内の一軒はポルノ映画専門だったけどね、笑いながら従兄弟が呟いた。どこの地方都市に行っても思うが、駅前の商店街は人が疎らで、特にスーパーの買い物袋を手に提げた人を見かけない。モータリゼイション、という言葉も死語に思える程に個人個人が車で移動するのが当たり前な世の中、電車とバスで移動する事が少なくなった結果だろう。生活感のある場所が駅前通りからバイパス沿いに替わったのだ。
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by kenya-guitar | 2012-08-14 17:02 | 雑記 | Comments(0)

帰郷(4)

〈妖怪(名)〉ばけもの。

それじゃあ伯母さんの家へ行くか、と墓のある山から車で下りてからふと思い出した。
私が四歳の夏休みに丸々一ヶ月間岩手の実家に一人で預けられた事がある。今は亡き祖父母や、伯父と伯母、従兄弟達に相手をしてもらったのだが、その時の実家があった場所と今の実家のある場所は違う。北上川が毎年氾濫するため、引越しを余儀なくされた。三十年程前の事。北上川があってその流域に水田が広がり、その中を東北新幹線の高架線が続いている前の実家周辺の景色。それが墓のある山の中腹から望められるのを忘れていた。踵を返して再度墓のある場所へ。家族四人、車を降りた。

山があって裾野を川が流れて、ずっと水田が広がっている…その風景を妻と子供達に説明して、暫くボォっと眺めていた。

話は戻るが田舎に私が預けられた時、昼食後に退屈だった私は、農作業に連れて行ってくれ、と伯父にせがんだ。仕事の邪魔になるから駄目だ、と言われたが駄々をこねて、トラクターに乗って農道をずんずん進んで行く伯父の後を走って追いかけた。そしてその距離はどんどん広がり、やがてはぐれてしまった私はどこまで行っても青々とした水田しかない中に一人でぽつんと取り残された。方向感覚も失って、実家へ帰る道も全く見当が付かなくなり…宛てど無くただひたすら農道と畦道を歩いて行った。生きているものと言えば、烏と蛙くらい。そろそろ日が暮れてくる。私はこのまま野宿しなければならないのだろうか。祖母から座敷わらしや山姥などの妖怪が出る話も聞いていた私は、泣きたい気持ちを堪えて何時間も歩き続けた。すると…向こうの方でエンジン音と共に人が動いている影が見えて…少し歩いて近付いて見てみると、それはトラクターだった。ひょっとして?私は走った。ひたすら走った。
「なんだ、追いかけて来たのか?」
笑いながらも驚きと困惑を隠せぬ表情の伯父…だだっ広い水田の中、偶然にも伯父を見つけられた。
帰り道は伯父がトラクターに乗せてくれた。こんなにも速いのか、と歩いている時との速度の違いに驚くと共に、どこか誇らしげな五歳の私。

実際にあった出来事だが、今もよく夢に出てくる風景。見つかって良かったが、やはりあの時の焦燥感がトラウマになっているのだと思う。
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by kenya-guitar | 2012-08-11 14:58 | 雑記 | Comments(0)

帰郷(3)

〈墓碑(名)〉はかいし。

岩手到着から一夜明けた朝、部屋のカーテンを開けると窓ガラスから入ってくる真っ直ぐな陽射し。午前中ホテルの朝食を食べ終えた私達は、まず最寄りのショッピングセンターに立ち寄って墓参りする際に持って行く花と線香を購入した。お寺のある場所と父の実家、覚えているか、と昨夜従兄弟に訊かれ、おぼろ気な記憶に自信が無かった私は念のため地図に書いてもらって確認していた。

菩提寺に到着して小高い山の中腹、鈴木家の先祖が代々眠る墓に辿り着いた。先ずは掃除、と思ってはっと気付いたが、水道が無い。いつも行く妻の母の墓、我が家の近所の霊園には水道が備え付けられてあり、それと同じつもりで行ったのが間違いだった。よく見ると別の墓を掃除している麦わら帽子の男性、軽トラックには水が入っているだろうポリタンクが積んである。
暑さと焦りでぽとぽと汗が滴り落ちる私は、仕方なく娘と二人で車に乗って下山した。どうしようか、と考えあぐねている内に父の実家すぐ側に…ポリタンクを借り、水を貰う事にした。出迎えてくれたのは父の兄の跡継ぎ息子の五十代半ばの従兄弟。挨拶もそこそこに事情を話して直ぐに10L入りペットボトルに水を入れてくれた。山を降りてお寺の本堂の裏に行けば水道があったのに、と言われ、冷静に考えてそりゃそうだなぁ、と。夕方にまた来るから、と私と娘は車でお寺に戻った。日陰にいるとは思うが暑い中、妻と息子は墓の前で待っているはずだ。

掃除して花と線香を手向け、手を合わせ…一通り終わって、私は車から手帳を持って来た。今回、墓参のために帰郷したのは、墓碑に刻まれた代々眠る先祖を手帳に記そうという一番の目的があったからだ。写真に残せば、と言う妻の提案で墓碑銘にピントを合わせようとしたが、研磨された石の表面に日光が反射してうまい具合にいかない。やはり手書きで、とボールペンを取り出す。車に居るから、と妻と息子は居なくなる。面白そう、と興味津々の娘が読み上げる難しい漢字の法名を私は手帳に書き写していった。十三代続く農家、江戸時代以前からなのだろうが最初に刻まれた法名は明治12年に70歳で亡くなった七代目と天保8年に22歳で亡くなったその奥さんから。当時は機械も無く、農作業は全て人力で行なったであろうから、冬の厳しい東北の奥まった村落では相当な重労働だったろうと思う。明治の頃には二十代で亡くなった人もいた。じりじりと照り付ける日差しに額から汗が湧いては、ぽたぽた手帳に垂れてボールペンのインクが滲む。全部書き写すのに二人で二十分程要した。
「ぷは~っ…」
クーラーの効いた車に戻った私と娘は、水筒に入れてきた冷たいお茶を一気に飲み干した。
どう考えても百姓の先祖は百姓だっぺさ、とは父の兄が以前言っていた言葉。酒の席で、ある親戚が先祖が何をしていたか知りたいと言ったのに呟いて返した。当たり前の興味だとも思うが、果たして私の先祖は農家であった。
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by kenya-guitar | 2012-08-10 11:34 | 雑記 | Comments(0)

帰郷(2)

〈鼾(名)〉ねむっているときに呼吸とともに上あごの奥から出る、やかましい音。

インターチェンジを出てすぐにあるビジネスホテルにチェックインした我々は、それぞれの部屋へ。私は鼾がうるさいから、という事で喫煙可能な個室をあてがわれた。軽くシャワーを浴びてから、カーテンを開けてボォっと外の景色を眺める。右手には幹線道路、左手には山、すぐ下にはそれらに挟まれた格好で水田が続く。今回、先日亡くなった知人から形見分けされたギターを持参したのだが、ベッドがあって窓から外の景色が見えて…知人が入院していたガンセンターの部屋を思い出した。あの時も蝉がけたたましく鳴いていた。何となく暗い気分になった私は、ギターをケースから引っ張り出して少し爪弾いた。約一時間、部屋が狭いせいもあるのだろう、いつもと違った沁みる様な残響を感じる。

午後六時、約束した時間の少し前に従兄弟がひょっこり現れた。五十代半ばの従兄弟、亡くなられたお父様(私の伯父)は農業の傍ら、能面の製作家。従兄弟本人も農家ではなく自営業。質実剛健、勤勉実直な農村にあって、私同様に一族の変わり種的な存在なため、通じる部分が多い。都内にある写真の専門学校を卒業して報道写真家を志すも挫折したそうで、インドパキスタン戦争最中、シーク族が馬に乗って闊歩する中を旅したそうだ。ホテルのすぐ側にあるチェーン店系の和食レストランで、家族四人でご馳走になった。

歩いていると夕暮れ時の農業用水路の匂い…ほら、鴨がいるから割ときれいな水だよ、従兄弟が子供達に教えてくれた。息子はその様子を間近で撮影しようと接近するも、三羽の鴨に逃げられる。その水田の隣に外壁がボロボロの廃虚があった。築二十年くらいだろうか、その当時としては都会さを無理矢理演出したデザインに一際古臭さを感じる。一時期、岩手県の一地方都市の冠婚葬祭を担っていたそこは、昨年の大震災で建物が激しく損壊。取り壊される事もなくそのまま廃虚になった。蝉の鳴き声を背景に、幹線道路ではヘッドライトを灯した車が行き交う。

゛和食レストラン゛と言っても建物の造りは居酒屋だった。震災の影響で今年はホヤが高いんだよ、従兄弟が指差したカウンター脇にある桶の中には赤黒いホヤが何個か氷と一緒に入れられていた。他には盛岡の冷麺や冷たい担々麺がメニューに載せられている、のが千葉との違いだろうか。その゛和食レストラン゛で従兄弟と私の家族四人、お互いの近況を話し合った。私にとっての伯母にあたる従兄弟のお母様は、八十を越えてやや認知症も入り週に何度かデイサービスに通う他、介護のヘルパーさんがほぼ毎日自宅に訪問してくれるそうだ。年老いた親の介護、そして仕事の両立が大変だそうで苦労話を聞かせてくれた。都会の年寄りは田舎の年寄りよりも若いよ、以前、従兄弟が千葉に来た時にしみじみ語っているのを思い出した。農家の重労働で身体に負担が大きい上に、電車やバスで気軽に外出出来ない田舎の高齢者。老け込むのが早いのだそうだ。まぁ、確かに私の主宰する高齢者向け音楽教室には隔週、バスに乗ってやって来られる八十代半ばの女性も二人いる。誤解を恐れずに言って、私にとっての田舎の高齢者のイメージは、日当たりの良い場所で日がな一日椅子に座っているおじいちゃんおばあちゃん。

従兄弟とは結局、ホテルの私の部屋で二人、その日夜中一時まで色々と話し込んでいた。
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by kenya-guitar | 2012-08-09 13:01 | 雑記 | Comments(0)

帰郷(1)

〈郷(名)〉いなか。在所。

いつも見馴れた海沿いの町特有のランダムな形をした雲、ハイウェイを北上すると栃木県付近でそれと違った均一な雲がフロントガラスいっぱいに映った。まるで真っ青な空を絵の具の着いた刷毛でさっと撫でた感じ。東北道は内陸部の水田地帯を走っている。一面緑色、以前秋頃に東北を訪れた時に、逆に岩手から南下するにつれて水田が赤茶けてくるのが綺麗だったのを思い出していた。

午前に千葉を出発して休憩しながら家族四人、東北自動車道をひた走ること約六時間、岩手県一関インターに降りる。今回、私の病状がだいぶ良くなったので父の実家、私の先祖が眠る墓へ参りにやって来たのだ。土曜日午後三時過ぎの岩手は曇り空、千葉に比べて湿度がやや低く快適だった。とりあえず休憩しよう、とインターチェンジを出た幹線道路沿いに並ぶ新市街地、ショッピングセンターへ。従兄弟によると、今夜は駅前付近の旧市街地で祭りがあるそうで、甚兵衛や浴衣姿の若者が目立った。買い物客が交わしている話し言葉のイントネーションの違いで、自分がいつもとは違う場所に居るのだと実感した。土曜日夕時、祭り前の緩やかな空気感、千葉にもよくあるドーナツ屋でアイスコーヒーを頼んだ。が、こちらも県民性からかゆっくりした対応。十分くらい待たされたろうか、不満げな妻を「郷に入りては…」と笑って諌める。
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by kenya-guitar | 2012-08-08 16:18 | 雑記 | Comments(0)


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