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度し難いもの

最近、魂、みたいなものを強く信じられる様になった…と書くと、訝しげな表情をされる方も多いだろうとは思いながらも、敢えて書いてみる。例えば、前世や来世の連続性みたいなものがあるんだ、とただ漠然と思う。

昨日だったか、遅い朝、休日を取った妻がガアガアと騒音を立てて私の寝床、ソファの周りを掃除する、否、してくれているのだ…憎まれ口を叩きながら。なんだよ、と力なく返答しながらうたた寝、再び。すると、いきなり…

ブオン、ブオン、ブオン…

と、大きな音を立てて、瞑っている瞼に一筆書き、明確で強いブルー、太い毛筆で書かれた逆U字形が何発も現れた。直感的に「やばい、俺、殺される」とか「また大きな地震がくるのか」…と、書いていてUFO目撃情報の様相を呈してきてはいるが現実の話で、否、幻覚かもしれず。それもいずれ失せた後に、地震も何もなく生きている自分をただ実感して。あれはなんだったんだろう、と考えながら、まどろみの中にいた。

その後の昼過ぎ、妻に「夢の中で音楽が流れること、ってあるか」と訊ねると、それはない、と。絶対音感があるはずなのに。私は幽体離脱みたいな感覚も小学生の頃からあるし、全身を流れる血流が毛羽立ってくる感覚もあったり、アスファルトを眺めていて浮き上がってくる事や、まあパラノイアもあるが。


十年くらい前、零細の水道工事会社でアルバイトさせて頂いた…早朝、東から昇る太陽を眺めながら満員電車に詰め込まれて、山手線の向こうにある事務所まで。シベリア帰りの先代の社長は、徴兵される前、陽の昇っている内は大八車で都内を回る職人で。私自身、糞尿の海の中、ほふく前進して排水管を修理する補助をしたり、もあった。それは別段、武勇伝として語るでもなく、そのリアルの中で生きる人間が感じる喜びや悲哀、のようなものを学ばさせて頂いた、のだと思う。きっと、そこから本来の誇り、が生まれて、ある時には本来共有されるべき職業倫理などがあり、そこに優しさや思いやり、尊敬、というかけがえのないない感情も生まれ…。あの時期、私はまさに糞尿の海の中を這いずり回るべきだったのだ。感覚的にそこにいたのだろうと思う。それで初めて、ニッカポッカを履いて労働される方々の憂うつに寄り添えるはずだ。
例えば、魚屋さんの商品を買う時に、丸々一本買う…要するに捌いてもらうことはしない。自分で魚を捌いてみて下手さ加減に飽き飽きしながら、学び…最終的にその魚屋さんのリアルに寄り添ってみる。そこにはなんのメソッドもセオリーも不要なはずだ。やってみて初めて分かる。レシピなく料理してみて、初めてレシピの有難味が分かる感覚を覚えるべきで…。

糞尿の海で足掻いたその後、私は真っ黒いブラックに焦げ付き、悪夢の分析を始めて…自己解体に勤しんだ。それもただ感覚的に内面へのベクトルを研ぎ澄ますだけの作業で。幼い頃から熱中した美術も、柔道も、数学も、音楽も、そんな感じだった。こうやって書いている文章だって、どこかで方法論を学んだ訳でもなく。だから、どぶの臭いも感じずに、どぶ板を渡ろうとするのは恐ろしい事だ、と、よくよく思う。


それじゃあ、恐ろしいほど真っ青なあの逆U字形はなんだったのか…と、ここまで書いて逆流するが、それは私が寄り添って差し上げられなかった魂、の憂うつだったんだろう、と思う。ブルース、哀歌…それを感じながら、生きるべきだな、と、情報が錯綜して全てが記号として取り扱われ二元的な価値しか生み出さずに、本質を持つべき現実から引き剥がされそうなこの世界の憂うつに寄り添う資格を身に沁みるのだ。それも幻覚だ、と言われればそれまでだが…。

色即是空、空即是色…仏教的にはそういう表現もある。それは、とある菩薩の表現であり…。本来、全ての方々がこの世界の憂うつを噛みしめながら、それぞれが本来の仏の姿になっていくべきだ、と強く願うのである。


「アンタをこれ以上許していたらね…アタシゃ、神様かお釈迦さまよ!!」と、私に向かって怒鳴った妻。申し訳ありませんでした…あなたも、お釈迦さまです。と、妻に敬意も払いつつ、私もいつかは仏か神様になれるのだろうか、と自問自答を繰り返す日々なのだった。
by kenya-guitar | 2014-12-19 01:21 | 雑記 | Comments(3)
Commented by 神大 at 2014-12-19 17:45 x
千葉地域ならば富士山見える所あるじゃないかなぁ
Commented by Shushi at 2014-12-19 23:30 x
エッセイ楽しめました。いつもありがとうございます。私は夢のなかで音楽聴こえますが、いつも覚えていません。それは、自分がアドリブをとっていて「あ、すげー」とおもうこともあったり(アホですね)、「この演奏はスゴイ!」というものだったりしますが、目覚めるとすごいという質的感覚だけが残っているだけ。あまた夢を見ましたが、今となっては悪夢すら体験として血肉になっている気がします。
Commented by kenya-guitar at 2014-12-20 00:18
いつも私のような者の文章を読んで頂いて、コメント頂き、ありがとうございます。

>神大さん
富士見町、もありまして…たまにアコースティックギターのイベントを、とある店でやらさせて頂いてます。酒場の憂うつ、ってのもあり。琴線触れ合う中、生まれるダイアログに寄り添う音楽を願ってやみません。よろしければ、是非。

>shuさん
こちらこそ、本当にありがとう。色々と勉強させて頂いてます。

>kさん
まあ、こんなんですが、色々とじっくり対話していきましょう。

ではでは。


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